【今さら聞けない?】印刷用語の基本ワード ~トラブル防止&コスト削減にも~

【今さら聞けない?】印刷用語の基本ワード
~トラブル防止&コスト削減にも~
こんにちは。福岡 博多の三栄印刷です。
「今さら聞けないけど、この印刷用語ってどういう意味 …?」
印刷会社との打ち合わせで、印刷用語が飛び交って戸惑ったり、意図が正確に伝わっているか不安になった経験はありませんか?
会社案内、チラシ、名刺、ポスター、封筒など、印刷物は今も“情報を伝え、信頼を築く”ための業務に欠かせないツールです。しかし、印刷用語が壁となり、意図したイメージが思った通りに伝わらず、もどかしさを感じたことがある方もいらっしゃるかもしれません。
私たち印刷会社の人間も、お客様に対してつい慣れた言葉で説明してしまい、ご不便をおかけしていることがあるかもしれません。この点については、もっと分かりやすいご案内を心がけていきたいと考えています。
近年、お客様がCanvaのようなオンラインデザインツールや生成AIを活用して素材を作成するケースも増えています。
印刷用語を正しく知っておくと、印刷会社とのやりとりが円滑になり、トラブルの防止やコスト削減にもつながります。
そこで今回は、コミュニケーションの行き違いを防ぎ、安心して印刷物づくりを進めていただけるよう、よく使われる印刷用語を紹介します。
【印刷用語 単語帳】
印刷発注の現場でよく使われる基本用語を、カテゴリ別に紹介します。印刷会社との会話やデータ準備をスムーズに進めましょう!
◇ 画像と色
CMYK (シーエムワイケー)
- 色の表現方法の一つで、印刷における基本のカラーモードです。シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインキに、ブラック(K)を加えたものです。
- CMYK(印刷物)とRGB(画面で見る色)とでは、色の表現方法が異なるため、同じデータでも少し色味が変わって見えます。
RGB (アールジービー)
- 色の表現方法の一つで、光の三原色である赤(R)、緑(G)、青(B)を指します。PCモニターやスマートフォンなど、デジタルデバイスにおける表示の基本です。
- 印刷用にCMYKへ変換するとくすんだような色味に変わってしまう色があります。
特色 (とくしょく)
- CMYKでは再現が難しい特定の色を、特別に調合したインキで印刷する方式です。コーポレートカラーやブランドカラーなど、特に正確な色再現が求められる際に用いられます。
- PANTONEやDIC等の標準化された色見本帳の色番号で指定するのが一般的です。多くの企業のロゴで使われる色や、ブランドカラーなどはVI(ビジュアル・アイデンティティ)マニュアル等で特色番号が規定されています。
色数 (いろかず)
- 印刷物を制作する際に使用されるインキの色の数を指します。例えば「フルカラー(CMYKの4色)」「特色2色」「スミ1色(黒1色)」などと表現されます。印刷物の表面と裏面で異なる色数を指定することもあり、その場合は「表面4色/裏面1色」のように表記されます。色数をCと略すこともあります。(両面フルカラーの場合は4C/4Cなど)
- 使用するインキの種類が増えるほど、一般的にコストは上がる傾向にあります。特色は特定の色を正確・鮮やかに再現したい場合に有効ですがコスト増加の要因にもなります。見積り依頼やデータ作成の際は、正確な色数の指定が非常に重要です。
解像度 (かいぞうど)
- 画像のきめ細かさを示す数値です。(単位:dpi)
- 印刷でキレイな画像に仕上げるためには通常300~350dpi必要です。特にお客様がデータを作成される際、Web用の低解像度画像(72dpi等)をそのまま使うと、印刷時に画像が粗くなってしまうことがあります。
◇ データ作成
塗り足し (ぬりたし)
- 紙のフチまでデザインがある場合、断裁時のズレによって紙の白い部分が見えてしまわないようにするために、仕上がりサイズより外側(3mm程度)まで余分にデザインを広げること。
- フチなしデザインには必須です。仕上がりサイズで写真などをカットしてしまわないようにしましょう。
トンボ/トリムマーク
- 印刷データの四隅などにつける「+」のような目印。仕上げ断裁位置を示します。印刷は大きな紙で行い、その後指定サイズに断裁するため、トンボは正確な断裁位置を示すのに不可欠です。
- 完全データ入稿の際は、このトンボを正しく設定することが意図通りの美しい仕上がりのために重要です。
アウトライン化 (あうとらいんか)
- デザインデータ(Adobe Illustratorデータなど)に含まれる文字情報を、編集可能なテキストとしての性質をなくし、代わりに点と線で構成される固定された「図形」データに変換する処理のことです。
- 異なるPC環境での文字化けや意図しない書体変更を防ぎ、作成時の見た目を保持するために重要です。処理後は文字の再編集ができなくなるため、アウトライン化前の元データは必ず別に保存しましょう。
PDF (ピーディーエフ)
- Portable Document Format、Adobeが開発した電子文書フォーマットで、どのようなデバイスやソフトウェアで開いても、同じように表示できるのが特徴です。
- 見た目の再現性が高いため校正にも活用されます。環境によるトラブルが少なく印刷入稿の推奨形式です。データ作成時はフォント埋め込み、高解像度CMYK画像、正しいトンボ・塗り足しの設定が重要です。
◇ 印刷物の仕様
紙質 (かみしつ/ししつ)
- 印刷に使う紙の種類のことです。下記は代表的なものです。
上質: <さらさら>コピー用紙に近い自然な風合いで、文字が読みやすい紙です。
コート: <つるつる>光沢があり、写真やイラストが鮮やかに見える紙です。
マットコート: <しっとり> 光沢を抑えた、しっとりとして落ち着いた雰囲気の紙です。
特殊紙:独特な手触りや模様、機能を持つ個性的な紙のことです。 - 紙質で印刷物の印象は大きく変わります。伝えたいイメージに合った用紙選びも重要です。
紙の厚さ
- 一般的に数値が大きいものほど厚くなります。この厚さを示す主な指標に連量(れんりょう)があり、これは規定サイズの紙1,000枚分の重さをkgで表したものです。斤量(きんりょう)と呼ばれることもあります。70kgや<70>のように表示することもあります。
- 異なる原紙サイズでは同じ厚さでも連量の数値が変わるため、比較の際は「四六判」に換算するのが一般的です。実際の厚みや質感が気になる場合は、印刷会社に紙サンプルを依頼して確認するのが確実です。
オフセット印刷
- 商業印刷で最も広く用いられている高品質な印刷方式です。印刷版に付着させたインキを、一度ゴム製のローラー(ブランケット胴)に転写(オフ)し、そのブランケット胴から紙などの被印刷体に圧着(セット)して印刷します。
- 高い解像度と色再現性を誇り、特色や高精細な画像印刷にも適しています。大量印刷時は1部あたりのコストが下がるため、部数が多い印刷に向いています。
オンデマンド印刷/デジタル印刷
- 「必要なものを、必要な時に、必要な数だけ」迅速に用意したい場合に適した印刷方式をオンデマンド印刷と言います。デジタル印刷は印刷版(はん)を作らずにデジタルデータを直接印刷機に送り、トナーやインクジェット方式で出力する印刷方式です。これらは非常に密接な関係にあり、一体的に扱われることが多いです。
- 1枚からでも対応可能で、小ロット・多品種に最適です。製版が不要で乾燥時間も必要ないため、スピード重視の案件に強みがあります。また、一枚ごとに内容を変えるバリアブル印刷も可能です。印刷品質は年々向上していますが、大部数の場合の単価や、特色などの厳密な色再現性が求められる際には、オフセット印刷が有利になる場合もあります。
バリアブル印刷
- 一枚一枚の印刷物に、異なる文字や画像などを印刷していく印刷手法です。「可変印刷」とも言います。代表的なものに宛名印刷があります。
- DMの宛名やメッセージの個別化、クーポン券のナンバリング、会員証の個別情報印字など、マーケティングに最適です。小ロットでのパーソナライズ印刷を実現します。
版 (はん)
- オフセット印刷で使う、インキを紙に転写するための板のことです。インキ1色につき1枚の版が必要です。例えばフルカラー印刷(CMYK)では、シアン・マゼンタ・イエロー・ブラックの各色に対応した版がそれぞれ1枚ずつ、合計4枚の版が必要になります。
- フルカラーに加えて特色を使用する場合は、その特色の数分だけさらに版の枚数が増えるため、コストにも影響します。
表面加工 (ひょうめんかこう)
- 印刷物の耐久性を高めたり、見た目の美しさや手触りなどの質感を向上させるために、印刷後の紙の表面に施す様々な加工のことです。
- 代表的なものに、PP加工(ラミネート)、ニス加工、箔押しなどがあります。用途やデザイン、予算に応じて様々な加工が選ばれます。ただし、加工によってはリサイクル適性が低下する場合があるため、環境への配慮が必要な場合は事前に確認することが推奨されます。
製本 (せいほん)
- 印刷された複数のページを、読みやすいように順番に揃え、針金や糊、糸などで綴じ合わせ、断裁して本の形に仕上げる一連の作業のことです。
- 代表的な方法には、開いた紙を重ねて中央部分を針金で綴じる「中綴じ(なかとじ)」、本文の背になる部分を糊で固めて表紙でくるむ「無線綴じ(むせんとじ)」、本文を糸でかがり硬質の厚紙で作った表紙で仕上げる「上製本(じょうせいほん)」、ページに穴を開けて金属やプラスチックのリングで綴じる「リング製本」などがあります。作りたい冊子のページ数、用途、予算、求める耐久性や開きやすさによって適切な製本方法が異なります。
折加工 (おりかこう)
- 印刷された用紙を、用途や仕様に合わせて、指定された位置や方法で折り畳んで仕上げる加工のことです。
- 二つ折り、巻三つ折りやZ折り、観音折り、蛇腹折りなど、情報の見せ方やデザインに応じて様々な折り方があります。
仕上がりサイズ (しあがりさいず)
- 印刷物が、断裁や折り加工などの工程を経て、最終的に製品として完成したときの実際の寸法(タテ×ヨコの大きさ)のことです。通常、ミリメートル(mm)単位で指定します。
- 印刷データを作成する上で最も基本となるサイズ指定です。このサイズは断裁や折り加工など、全ての加工が完了した後の最終的な製品寸法を指します。特に折り加工等が含まれる印刷物の場合、仕上がり寸法は折った後のサイズを指しますが、データ作成や実際の印刷は展開された状態で行われるため、設計時にはその両方を考慮する必要があります。
断裁 (だんさい)
- 印刷された用紙を、指定された仕上がりサイズや形状に合わせて、専用の機械(断裁機)の刃物で切り揃える加工のことです。通常、印刷データに付けられた「トンボ(トリムマーク)」を目印にして正確な位置でカットします。
- 印刷物を最終的な形に整えるための重要な工程です。断裁時には用紙の伸縮や機械の特性によりわずかなズレ(断裁ズレ)が生じる可能性があるため、仕上がりサイズのフチまで色やデザインがある場合には、裁ち落とし部分となる塗り足しを設けておくことが必須です。
◇ 印刷会社とのやりとり
入稿 (にゅうこう)
- 印刷物を作るために必要な材料やデータを、印刷会社に渡すことです。
主な方法として以下があります。
<素材入稿・企画デザイン依頼>
文字原稿や写真などの「素材」を支給し、デザイン、データ制作等から印刷会社に依頼する方法です。 - 印刷会社がデータを作成するため、イメージや要望を明確に伝えることが最も重要です(三栄印刷ではこの段階からご相談いただけます)。
<完全データ入稿>
お客様側で作成した、そのまま印刷できるデザインデータ(Illustrator、PDF等)を支給する方法です。 - 印刷に適したデータ作成が前提です。印刷知識を活かしたデータ準備が、スムーズな進行と良い仕上がりにつながります。
校正 (こうせい)
- 印刷前に文字やデザイン、内容、色などをチェックする作業です。間違いや修正がある場合はここで指摘し、再校正(修正)を依頼します。
- デザインからご依頼いただいた場合、お客様による校正は非常に重要です。特にロゴや企業名、連絡先などの重要な情報は慎重にご確認ください。
色校正 (いろこうせい)
- 本番の印刷に進む前に、実際の印刷物に近い状態で色味を事前に確認する作業です。意図した色と印刷結果の差異を最小限に抑えるために行われ、最終製品に近い「本機校正」と、比較的迅速・安価な「簡易校正」などがあります。色校正を行わない場合もあります。
- モニターの色と印刷物の色は異なるため、特に色が重要な印刷物での失敗を防ぐのに役立ちます。本機校正と簡易校正は目的や予算に応じて使い分けます。
校了 (こうりょう)
- 「校正OK! この内容で印刷してください。」という修正箇所が一切なく、最終承認したことを示す言葉です。
- この後は原則として修正は受け付けられず、印刷工程に移ります。校了後に修正が発生すると、進行状況に応じて別途費用が発生することがあります。
責任校了 (せきにんこうりょう)/責了 (せきりょう)
- 校正の最終段階において、修正がごく軽微で、その内容も明白な場合に、発注者が修正作業とその後の最終確認を印刷会社に全面的に委ね、修正後の再校正を見ることなく印刷進行を承認する校了方法です。
- ごく僅かな文字修正等で納期短縮を図りたい場合に利用されます。ただし万一の修正ミスや解釈違いのリスクもあるため、複雑な修正には向きません。
◇ ロゴ等の表示
CI (コーポレート・アイデンティティ)
- 企業が持つ理念やビジョン、独自性などを体系的に整理し、社内外に対して統一されたイメージで発信していくための戦略や活動全般のことです。「企業らしさ」を明確にし、その価値を高めることを目指します。
- 3つの要素から構成されます。
MI:マインド・アイデンティティ(理念の統一)
BI:ビヘイビア・アイデンティティ(行動の統一)
VI:ビジュアル・アイデンティティ(視覚の統一)
VI (ビジュアル・アイデンティティ)
- 企業の理念やブランドイメージを視覚的に具現化し、社内外に統一的に伝達するためのデザイン体系や活動のことです。企業の顔となるロゴマーク、コーポレートカラー、書体(フォント)といった基本デザイン要素を定め、それらの効果的な展開方法や使用ルールを体系化することも含みます。CI(コーポレート・アイデンティティ)の重要な構成要素の一つです。
- 名刺、ウェブサイト、広告、製品パッケージといったあらゆる媒体において、デザイン要素を統一することで、ブランドイメージの認知度向上と信頼性の構築に繋がります。様々な媒体における印刷物のデザインにおいては、このデザイン規定を遵守することが大切です。
認証ロゴ使用規程
- 認証機関が、その認証の信頼性やブランド価値を維持するために定めている、認証ロゴマークのデザインや表示方法、使用条件に関するルールのことです。認証を取得した組織がロゴを使用する際に、遵守が求められます。ロゴの変形・加工の禁止、指定色、最小使用サイズ、周囲の余白(アイソレーション)確保、認証番号の併記義務、使用可能な媒体や範囲などが、通常、厳格に定められています。
- 規程に違反すると、認証の取り消し等につながるリスクがあるため、ロゴを使用する際は、必ず個別の認証機関が発行する最新の使用規程(ガイドライン/マニュアル)を事前に確認し、ルールを正確に遵守することが極めて重要です。
「今さら聞けない」と思っていた印刷用語も、意味や理由を知ることで、以前よりもずっと親しみやすく感じていただけたら嬉しいです。
用語の理解は、印刷トラブルを減らし、コストを最適化し、そして何より、あなたの「こんな印刷物を作りたい!」という想いを、よりスムーズかつ的確に形にするための大切なステップです。
私たち三栄印刷は、企画・デザインのご提案からデータ作成、印刷、加工、そして仕分け・梱包、全国への発送、DM発送代行といった納品後のサポートまで、総合印刷会社としてワンストップでサポートいたします。
お客様の「こういうものが作りたい」という漠然としたイメージから、具体的なカタチにし、必要な場所へお届けするまでお手伝いしています。
「この用語、やっぱりよく分からない…」「うちの部署のこの印刷物、もっと良くならないかな?」「企画やデザインの段階から相談したいんだけど…」 どんな小さな疑問やお悩みでも、どうぞお気軽に三栄印刷にご相談ください。
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